「これだけで1日分の栄養が摂れます」
サプリメントや食品の宣伝で、こうした謳い文句を聞く事が多々あります。
何となく聞こえが良く、体に良さそうなので思わず買ってしまった、と言う人も多いのではないでしょうか?
でも実際に「1日分」と言うのはどういう基準なのでしょうか?今回のDeep Worldで解説していきます。
【食事摂取基準】
日本では、厚生労働省が主管となり「日本人の食事摂取基準」を定めています。この基準を元に「1日分」等謳っています。
では、この「食事摂取基準」とはそもそもどういう基準なのでしょうか?
"日本人の食事摂取基準は、健康な個人及び集団を対象として、国民の健康の保持・増進、生活習慣病の予防のために参照するエネルギー及び栄養素の摂取量の基準を示すものである。"
これが摂取基準の報告書に書かれているそもそもの定義です。
もう少し他の情報も足した上で簡単に言うと、「(報告書内で定義する)特定の年齢や性別に属する大多数の健康な人が、健康であり続けるために、どれくらいのエネルギーや栄養素が必要かと示したもの」と言うことです。
例えば、「28歳の男性だったら、xxの栄養素はこれくらい摂っていれば健康でいられるでしょう」と言う基準になります。
しかし、ここで気を付ける必要があるのは、「筋トレをしている」「筋肉をつけたい」人か否かは考えられていないということです。
"そうでない人"の方が、まだまだ割合としては多いので、全体に対して基準を示す上では、これは仕方のない事だとは思いますが、我々はそれを認識して摂取基準を活用する必要があるのです。
【基準の量】
栄養素の摂取基準には、全部で5つの指標があります。
・摂取不足の回避を目的とする指標
「推定平均必要量」(estimated average requirement:EAR)
半数の者が必要量を満たす量
「推奨量」(recommended dietary allowance:RDA)
ほとんどの者が充足する量
「目安量」(adequate intake:AI)
十分な科学的根拠が得られず、推定平均必要量と推奨量が設定できない場合に設定
・過剰摂取による健康障害の回避を目的とする指標
「耐容上限量」(tolerable upper intake level: UL)
・生活習慣病の発症 予防を目的とする指標
「生活習慣病の発症予防のために現在の日本人が当面の目標とすべき摂取量」
厚生労働省の報告書にある概念図で見てみましょう。
*「生活習慣病の・・・」は概念図には登場しません。
つまり、「推奨量」と「耐容上限量」の間に収まる量を摂れば、不足なく、摂り過ぎによる害はない、と言えます。
「1日分」は大抵の場合推奨量(栄養素によっては目安量)を基準としています。
但し!先にお伝えしたように、この基準は「普通の人」を対象としているので、我々のように筋トレをして、筋肥大を目論む人の場合、つまり「健康でいる」というレベルではない人の場合、そのまま当てはまるかは定かではありません。
【参照体位】
もう一つ気を付ける必要があるのは、報告書では「参照体位」と呼ばれる、要は「これくらいの体格の人を想定しています」と言う数値があるということです。
具体的には、18-29歳の男性であれば、身長171.0cm、体重64.5kg、同じく女性であれば158.0cm、50.3kgとなります。
もしあなたが体重95kgだったら、推奨量は体重比と同じで約1.5倍になるのでは?と推測されます。
【実際の摂取基準】
具体的に、我々に最も関係がある栄養素であるたんぱく質で見てみましょう。
(18-29歳の基準です)
推奨量:男性65g/女性50g
耐容上限量:設定なし
推奨量と参照体位を比較すると、大体体重1kgあたり1gが推奨量となっています。
ですので、もしあなたが体重95kgであれば、推奨量は95gと言えます。
耐容上限量については、"現時点ではたんぱく質の耐容上限量を 設定し得る明確な根拠となる報告は十分ではない。"という理由で設定はされていません。実際に健康被害は絶対にない、ということではありませんが、「これ以上摂ったら危ないよね」という研究はない(少ない)と言えます。
もう一つ、抗酸化ビタミンでもあるビタミンEではどうでしょうか?
推奨量:男性6.0mg/女性5.0mg
耐容上限量:男性850mg/女性650mg
ビタミンEは脂溶性ビタミンであり、使われない分は溜まっていってしまうので耐容上限量が設定されています。
それにしても、推奨量と耐容上限量の差が激しいですね!(100倍以上)
【Forトレーニー】
トレーニーとしては、「健康でいられる」という方向性は大前提として必要だと思いますが、「筋肉を付ける」という至上命題があるので、物理的に考えても栄養素の必要量は多くなるでしょう。
また、トレーニングの内容によっては抗酸化物質である栄養素がもっともっと必要になるでしょう。
人それぞれで状況や状態が違うので、一概に「トレーニーなのでこれだけ必要」とは言えませんが、とりあえずは人として不足しない量の確保は努めた方が良いでしょう。
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